NIPT(新型出生前診断)を受けることで、中高年以降の高齢出産事例における、ダウン症など3つの染色体異常を出生前に発見することができるなど大きな注目を集めました。初産年齢が右肩上がりで上昇を続ける中で、数多くの妊婦の方が出産に対して不安を抱いています。妊婦のこのようなニーズの高まりを受けて、関係学会の認定を受けた医療施設で実施されているだけだったNIPTも、普通の医療機関でも実施する向きが増加してきました。
しかしこのような施設では、陽性が出た後のフォローアップやカウンセリングが不十分でったり、地方によっては実施施設が足りないなど数々の問題点が産婦人科医を初めとした関係者より指摘されていたところです。
そこでNIPT本来の趣旨に立ち返り、検査を受ける妊婦にカウンセリングを義務付けたり、認定施設を増加するなど新たな指針が日本産婦人科学会より発表されました。今後は検査結果を知るだけでなく、その先の両親や子どものケアを視野に入れたトータルケアを提供することがNIPTを実施する医療機関には求められるようになるはずです。
NIPTというのは、日本語でいうと新型出生前診断のことであり、2013年の国内への導入以降その検査に対する注目度は年々高まりつつある存在です。そんなNIPTの従来の出生前診断との大きな違いは、母体の採血のみという非常に少ない負担で検査を行える上にたの染色体異常を96.5%、特異度99.9%という高い精度で行える、というところにあります。なお、本検査で検出できる染色体異常は21、18、そして13トリソミー症候群の3つで、全ての染色体異常に対して3分の2にもおよびます。ただし、本検査は染色体疾患を確定診断するものではありません。あくまで可能性を示唆するいわゆる日確定検査という位置付けにある点には注意が必要です。
また、本検査の存在は胎児が先天的な障害をもっていると判明した場合にそれを理由に中絶することは許されるか、という倫理的問題と切り離すことができません。本検査がルーチン化した結果として障がいを理由とした中絶が当たり前の社会となり、障がい者がますます行きにくい社会になることが懸念されています。